Webディレクターとして仕事をする以上、デザイナーに指示をする機会が多く発生することになる。例えば、プロジェクトの上流フェーズが終わりいよいよ制作開始という段階。
大抵はこの段階でワイヤーフレームなどの資料が出来上がっており、その資料をベースにデザイナーにデザイン指示をすることになるだろう。場合によっては、サイトの要素を書き出した簡易的な資料のみでデザインを依頼することもあるかもしれない。
いずれにしても、このタイミングでWebディレクターが適切に指示を出せていないと、この先の制作工程で様々な問題が発生することになってしまう。そうならないためにも、今回はデザイナーにデザインを依頼する時、何をどのように伝えれば良いのかについて考えてみよう。
デザイナーに何を伝えるべきなのか

ある程度経験を積んだディレクターであれば、デザイナーがどのような情報を欲しがっているのかを感覚的に理解していることだろう。しかし、まだ経験の浅いディレクターの場合は、そもそもデザイナーに何を伝えるべきなのか理解できていないことが多いかもしれない。
今一度、原点に立ち返ってデザイナーに共有すべき内容について整理してみよう。主に以下の内容を共有する必要がある。
- Webサイトの概要・目的
- 画面構成
- スケジュール
- ベンチマーク
- デザインイメージ
- デザインのNG例
- デザインの進め方
もちろん、人によってはより踏み込んだ情報を共有する場合もあるだろうが、概ね上記の項目が共有できていれば問題なくデザイン作業に着手することができる。念のため、一つ一つ簡単に解説していこう。
・Webサイトの概要・目的
クライアントはどんな企業で、今回制作するWebサイトは何を伝えるためのものなのか。最終的なコンバージョンは何なのか、ターゲット層はどこなのかなどの情報を伝よう。
制作するWebサイトの概要や目的を伝えなければ、デザイナーは闇雲にデザインを進めることになってしまう。その結果デザインのクオリティが著しく下がる可能性もあるので、まず最初に概要と目的を共有するようにしよう。
・画面構成
画面構成は「ワイヤーフレーム」を作って共有するのが最も効率的だ。デザイナーが知りたいのは、制作するページ数、サイト内の文章・キャッチコピー、サイト内にどんなコンポーネントがあるのか、h1、h2などの階層構造などだ。ワイヤフレームにそれらの情報を盛り込んで共有しよう。
プロジェクトによってはワイヤーフレームではなく簡易的な資料を共有する場合もあるかもしれない。いずれにしても、上記で挙げた内容がデザイナーに伝わるようになっていれば問題ない。
・スケジュール
プロジェクト全体のスケジュールを共有し、その上でデザインをいつまでに完了させるべきかを伝えよう。この共有を怠っていると、デザイン納期ギリギリで未着手だったことに気付く、という最悪の展開になりかねない…。
・デザインイメージ
デザインのイメージを言葉で伝えよう。例えば、以下のようなイメージだ。
「女性用の高級化粧品のサイトなので、シンプルで清潔感のあるイメージで。フォントもスタイリッシュなものを使用し、余白を多めに取って女性モデルの写真が目立つようにしてください。」
Webサイトのターゲットを伝え、その層に訴求するためにこのようなデザインにしたい、と伝えるのが最も分かりやすい方法だ。加えて、フォントのイメージやサイト内で目立たせたい部分についても共有しておこう。
デザインイメージの言語化方法についてはこちらの記事で詳しく解説している。
・ベンチマーク
ベンチマーク = 参考サイトのことだと思ってほしい。デザインの雰囲気は、イメージに近い参考サイトを提示するのが手っ取り早い。参考サイトを見せながら、全体のカラーバランスやアニメーションなど参考にしてほしい部分を説明しよう。
参考サイトは特定のキーワードでブラウザ検索をして闇雲に探すよりも、美しいWebデザインをまとめたサイトで探す方が効率的だ。よく利用されるサイトは「SANKOU!(サンコウ)」「WebDesignClip(ウェブデザインクリップ)」など。
・デザインのNG例
デザインのNG例を共有することも効果的だ。今回のWebサイトで目指して欲しくない方向性を伝えよう。例えばモダンな雰囲気のサイトを目指しているなら、可愛らしいイラストやポップなフォントがNG例になる。
なお、デザインイメージがしっかり伝わっていれば、NG例は必須ではない。
・デザインの進め方
デザインソフトは何を使用するのか、画面幅は何pxで作ってほしいのか、どこから着手していつまでに何がほしいのかを伝えよう。「〇〇日の午後までにデザインの方向性が分かるようなラフを作ってほしい」というように作業内容を明確にして依頼しよう。
特に参考サイトが重要

上で挙げた項目をまとめて文章・口頭で丁寧に伝えれば、デザイナーはあなたの意図を十分に理解してくれるはずだ。なお、この中で最も重要な情報はベンチマーク、つまり「参考サイト」あd。
筆者はWebディレクターになる前はデザイナーだった。そのため、指示を出す側ではなく、指示を出される側の経験もある。指示をもらう側としては、ディレクターの頭の中にあるイメージを延々と話されるよりも、デザインの参考例を一つ提示してもらったほうが圧倒的に分かりやすいのだ。
デザインというものは視覚的な表現を作り上げる作業だ。そのため、デザインのイメージも目に見える形で提示してもらった方が分かりやすい。
とはいえ、参考サイトを見せるだけでは不十分だ。どの部分を参考にして、どの部分はズラしてほしいのか。そういった具体的な説明も必要だ。
ちなみに、優秀なデザイナーであれば参考サイトをベースにしつつ、デザイン意図を汲み取ってそれなりに差があるものを作ってくれる。経験の浅いデザイナーの場合は参考サイトをそのまま模倣したデザインが出てくる可能性があるので注意が必要だ。
伝える上で重要なこと
デザイナーにデザイン意図を伝える上で、伝え方というのも実はかなり重要だ。先ほど挙げた項目を整理した上で、一緒にワイヤーフレームなどの資料を見ながら打ち合わせをするのが最も効果的だろう。サイト構成を一緒にチェックしつつ、質問があれば都度答えていくようにしよう。
間違っても、テキストベースのみで指示を出さないようにしてほしい。すでに何度か一緒に仕事をしたことのある優秀なデザイナーでもない限り、テキストベースのやり取りでデザイン意図が明確に伝わることは無い。少なくとも、情報をテキストで伝えた上で電話などで説明をする機会を設けよう。
また、デザイナーに指示を出すときは適切な態度で臨もう。特に、上から目線で指示をするのは避けるべきだ。デザイナーに威圧感を与えても、良いデザインは出てこない。指示するべきところはしっかりと指示し、デザイナーの意見も聞きながら常に対等な目線で会話をするのが良い。
逆に下手に出てヘコヘコするのも危険だ。デザインについてあまり詳しくないディレクターの場合は、デザインのプロであるデザイナーを持ち上げすぎてしまうことがある。もちろん、デザインについては相手の方がはるかに詳しいだろう。ですが、プロジェクト全体を管理しているのはディレクター自身だ。場合によってはデザイナーにアドバイスを求めつつ、最終的な決定はディレクター自身が下すようにしてほしい。
まとめ:まずは伝えるべきことを整理し、自信を持って伝えよう
Webディレクターが各メンバーに適切な指示を出せるか。それは、プロジェクトの成功に大きく関わる非常に重要な問題だ。ぼんやりとした不明確な指示を与えてしまったり、自信が無さそうにオドオドしながら指示を出してしまうと、それだけでメンバーは不安を感じてしまう。
まずはしっかりと伝えるべきことを箇条書きで整理し、ワイヤーフレームなどの必要な資料を用意した上でデザイナーとのミーティングに臨もう。そして、仮に自分がデザイン素人だとしても、自信を持ってデザイナーに指示を出そう。
しっかり準備して自信を持って伝える。これこそが、我々Webディレクターに求められる理想の姿だ。準備の不足、自信の不足は失敗の元。ぜひ、今回取り上げた内容を踏まえてデザイナーとのコミュニケーションに活かしてほしい。
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