Webサイト制作において、クライアントの期待値をコントロールすることは非常に重要だ。
Webサイト制作のプロジェクトはデザインや実装後のWebサイトをクライアントに提案し、そこでどのような反応をもらえるかにかかっている。
クライアントの期待通りのものを出せれば言うことはない。きっとそのプロジェクトは上手くいく。
だが、クライアントの期待値を下回るようなもの、あるいは、期待値を大きく超えて(ズレて)いるものを提案してしまうと、そこからプロジェクトが不穏な雲行きを見せることもある。
クライアントの期待値をほんの少しだけ上回ることを目指す

そうならないためにも、クライアントの期待値を事前にコントロールしておき、最終的にその期待値をちょっとだけ上回る成果物を提案する必要がある。
まず、当然ながらクライアントの期待値を下回るものを作ってはいけない。期待されたレベルより低い品質のWebサイトを作ってしまうと、作り直しを要求されたり、最悪の場合それ以降全く仕事を依頼してもらえなくなってしまう。
かといって、期待値を大きく超えてしまうことも実は危険だ。
クライアントの期待値を大きく超えるということは、求められる以上のコストや手間をかけてWebサイトを作っている可能性が高い。もしくはオーバースペックの人材をアサインしている可能性だってある。これでは例えクオリティが高くても、採算が合わなくなってしまう…。
また、クライアントの期待値を大きく超えることは別のリスクも孕んでいる。自分が想像しているよりも遥かにすごいものが出てくると、クライアントはいつの間にかそれが当たり前だと思い込んでしまう。当然、次に提案するときも同等のクオリティを求めてくるだろう。これは長期的に見れば、自分の首を絞めることに他ならない。
だからこそ、クライアントの期待値をコントロールし、その期待値をほんのちょっと上回るクオリティを目指すことが重要なのだ。
時には期待値を下げておくことも大事

一方で、時には期待値を自ら下げておくことが求められる場合もある。例えば、プロジェクトがかなり無理のあるスケジュールで進行しており、明らかに期日までに到達すべきクオリティまで届かない場合だ。
この場合は、事前にクライアントの期待値を下げておく必要がある。その上で、実際に提出した成果物がその期待値をちょっとだけ超えるように調整するのだ。もちろん、「今回提出するデザインはクオリティが低くなりそうです」などと正直に伝えるのはNGだ。
例えば、通常の提出日よりも前倒しで一度ラフとして提案しておき、フィードバックを受けた上で最善のデザインを提案する、など。もちろん、このためには予めクライアントにスケジュールに無理があること、その中で最善を尽くすが場合によっては先にラフ案として提出する可能性があること、などを丁寧に伝えておく必要がある。
期待値を下げることは、期待値を上げることよりも難しい。
言葉巧みに相手に期待させることは誰だってできるが、ちょうど良い位置まで期待値を下げるのは至難の技だ。
だからこそ、期待値を下げる場合は慎重になろう。あまりに下げすぎてプロジェクト自体への興味を失わせてはいけないし、信頼を失うような発言をしないように気をつける必要だってある。
期待値を無理に上げることには意味がない

逆に、自ら期待値を無理に上げることに、あまり意味はない。
クライアントを喜ばせるために過度に期待値を上げ、仮にその期待を少し上回るWebサイトを作ったとしても、クライアントが喜んでくれる以上のメリットがあるだろうか?
デザイナーやコーダーは疲弊し、制作のコストは肥大化して結果的に赤字になっているかもしれない。満たされるのはクライアントの満足感と、高い評価を受けるであろうWebディレクター自身の自尊心だけだ。
自分でプロジェクトのハードルを上げ、それを超えるために無理な努力をするのはあまりに滑稽だ。自らの首を絞める行為には、何の生産性も無い。
期待値を無理に上げることはせず、適切な範囲内で努力すれば超えられそうなラインに上手く調整しておくのが肝心だ。
まとめ
今回はクライアントの期待値コントロールについて考えてみた。
ポイントは以下の3点だ。
- 最終的にクライアントの期待値をほんの少しだけ上回るクオリティを目指すのが重要
- そのために、時にはクライアントの期待値を事前に少しだけ下げておくことも必要
- 無駄にクライアントの期待値を高めることに、意味はない
「期待値」というものは、全く目に見えないものだ。だからこそ、その期待値をコントロールすることはかなり難しい。クライアントの求めるもの、自分たちが提案できるもの。それぞれを照らし合わせてちょうどいいラインを探る作業は、決して簡単なことではない。
だが、Webディレクターにはそのスキルが必要だ。
だからこそ、僕たちの仕事は難しく、そして魅力的なのだ。
期待値をコントロールする方法については、こちらの記事でも詳しく解説しているので、参考にしていただけるとありがたい。
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